「閖上を醸す」、佐々木酒造店を取材してきました!

「閖上を醸す」、佐々木酒造店を取材してきました!

閖上とは?

宮城県名取市にある閖上(ゆりあげ)は名取川南岸、太平洋に面した町です。古くから漁師町としてあり、江戸時代には仙台藩直轄の港で仙台に魚介類を売り栄えました。町自体、半農半漁の成り立ちを持ち、農民と漁師の風習・ 方言の気質が混在する地域です。特産品は日本一の美味しさと言われる赤貝、しらす、カレイ、ヒラメ、などの豊富な海産物有名です。笹かまぼこ、釜上げしらす、こうなごの佃煮などの水産加工品の産地としても知られています。

ヒストリー

閖上の「佐々木酒造店」は1871年創業、150年間続く造り酒屋です。2011年3月11日の東日本大震災では午後2:26の大地震、一時間後に押し寄せる大津波により大きく被災、閖上の海岸から約1.5km地点に本社店舗、酒蔵がありましたが全壊、流出してしまいます。蔵の屋上に避難し、津波に飲み込まれる町、酒蔵の様子を見ていた佐々木酒造店専務の佐々木洋さんはあまりの惨状に言葉を失いながらも、すぐに家業の復旧、閖上の復興を考えました。

翌年、2012年2月4日に閖上より南に4kmほど離れた美田園地区に名取市復興仮設商店街「閖上さいかい市場」が開場、市内で被災した事業者が復興を目指し、営業を再開しました。佐々木酒造店も入居し、蔵元直営店として酒類の小売販売を始め、同時に地酒「宝船浪の音」の製造、前代未聞の「仮設の酒蔵」の準備を始めます。
10か月後、美田園から北に3kmほど離れた下余田地区に名取市復興工業団地内に日本醸造史上初となる仮設蔵を準備しました。繊細な微生物の扱い、温度、湿度、衛生管理が必要になる酒造りにおいて、この仮設蔵は「ここでは、口に入るものが作ることはできないのでは」とお酒の先生方が漏らしてしまうような環境でした。
しかし、佐々木さんは臆することなく挑戦することを決め、「前例がないのであれば自分たちが最初の挑戦者になれる。これで美味しい酒が醸せれば酒造りの可能性、持続性、多様性を生み出せる!」と考えたといいます。
そこからは試行錯誤の日々。麹の作り方や、酒母造りなど震災前とはちがう手法を採用し、厳しい環境でも「今まで以上の高品質の日本酒を造ろう」とベストを尽くし続けました。その結果、仮設蔵の日本酒は全国、東北、宮城県と鑑評会で入賞を果たします。

被災した後、阪神淡路大震災での被災を経験した先輩酒蔵の方から「やるなら百年続ける覚悟で蔵を復興しなさい」と激励を頂いたそうです。酒蔵は地域の魅力であり特長、それを失えば町も力を失って消えて行ってしまう。自らが町の護り手であることを意識し、支えなさいという酒屋の役割をお話頂いたのです。
そんな数々の言葉、支援を胸に佐々木酒造店は2019年10月1日、ついに創業の地、閖上に戻ってきます。被災当日から「必ず閖上に戻ってくる」と決めていた佐々木さんの思いが現実になった日でした。

佐々木酒造店が醸す「宝船浪の音」は、被災地復興と地域創生の原資になると、故郷へ思いを寄せる佐々木さんの言葉にパワーを感じました。

終わりに

新設されたばかりの酒蔵では、「酒蔵見学」を実施しており(要予約)、銘酒の製造場を見ることができます。併設された売店では美味しいお酒の試飲販売の他、閖上の特産品を購入することができます!なんと日本酒の試飲は無料で、他の銘柄との飲み比べも可能です!ぜひ皆様も訪れてみてください。

震災から間もなく10年。佐々木酒造店が閖上に戻ってきて1年が経過しました。
佐々木さん、そして佐々木酒造店さんの飽くなき挑戦はまだ始まったばかりです。

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